EX シリーズ

こちらの文章は、Takuya Suzuki Visual Worksのブログへ以前投稿したものを一部リライトしたものです。あちらのブログアカウントに必要なログインe-mailを停止したため、今後は内容をこちらのブログへ移転しようと思います。

2017年12月24日(バンクーバー時間)約2年ぶりに、実験アニメーションシリーズexの第二弾を公開しました。公開に伴い今回は、実験アニメーションを作ろうと思ったきっかけや、制作についてお話ししたいと思います。

実験アニメーションとは?

そもそも実験アニメーションとはなんぞやと、疑問に思われる方もいるかもしれませんが 、こちらのサイトに、土居氏がうまくまとめられた文章が載っており、一般的定義としては、自分もほぼ同義なので一部を抜粋しておきます。

“作品の形式や制作の手法において独自のアプローチをとったり、アニメーション概念そのものに対する意識的な挑戦・再構築を行おうと試みるアニメーションのこと。「ナラティヴ」作品に対しての「実験・ノンナラティヴ」といったかたちで、カウンターとしての表現を目指す場合が一般的である。メインストリームのアニメーションが大規模スタジオにおける分業システムで画一的な手法・絵柄で作るのに対し、アニメーション作家が「個人」で自分独自の制作方法を案出することで作り上げる作品を実験アニメーションと呼んでいる。”

個人的に実験アニメーションと呼ぶ作品には、上に挙げたもの以外にも、何か別の目的の作品制作で必要になる技術的発展のための実験中に、偶然的にできてしまった素材と、気晴らしでソフトなどを模索中に、ハッピーアクシデント的にできてしまったアニメーションなども含まれます。

実験アニメーションを作ろうと思ったきっかけ

自分が実験アニメーションに興味を持った理由は、2007年オーストラリアの大学に留学中、コマ撮りの人形アニメーションを作っていたのですが、人形の骨組みとして針金を使用していたんですね。人形の骨組み以外にも、アニメーションのストーリーを伝える要素の一部として何かオブジェクトを作成する際に、針金を利用していたのですが、針金自体に価値を持たせたくなったといいますか、これまでサポート役として、サブで働いてきてもらったぶん、何か恩返しのようなことがしたかったんですね。

それで、針金というメインでないものをメインにする方法を模索してみたんです。そうしたら、アニメーション制作の過程で使用した針金のオブジェクトにスポットライトの光をあて写真撮影をしていた時に、針金に反射した光が綺麗だったため、その光自体を動かしてみたら面白いんじゃないかなと思ったんです。
普通アニメーターは対象となるキャラクターや、オブジェクトを動かすと思うのですが、自分は対象となる針金は動かさずに、スポットライトの光を動かし、その光をコマ撮りの手法で撮影することで、針金のラインに沿って動く光のアニメーションを作ってみたんです。

次に、その手法をベースに、針金の形質自体にも何か意味が欲しくなったため、人体の動きをトレースし、その軌跡を針金で再現することで、動きの本質そのものを光の情報にコンバートするようなイメージでアニメーションを作成する方法を思いついたんです。

そうしたら、それが当時学んでいた先生であるポール・フレッチャーさんや、ニュージーランドで行われたアニメーションのカンファレンスなどで評判になり、そういった方法で作るアニメーションもありなんだという自分の中での新しい発見につながったんですね。そのような流れがあり、現在の実験アニメーションを制作する活動に行き着きました。

制作プロセス

今回の制作手法に関して、「ex001」ではiPhoneで何気なく撮影した日常のシーンである実写映像をベースに、AdobeのAfter Effectsのブラー系のエフェクトを加え、幻想的な空間を作成し、それらをランダムに作曲家Sho Sakai氏のHomogenaized Timeという作曲技法で作られた曲に合わせ、映像を切り貼りすることで作り上げたノンナラティブ作品となっています。

ex002」は、3Dソフトで作成した抽象的な画像をインスピレーションに、プロットを作成し、そのプロットの展開に合わせた画像を最終的に6枚作成し、その画像をベースにまず曲を作成していただきました。 「ex002」ではプロットが前提にあったため、プロットの順序構成は崩さずに、過去の作品で作成した映像素材や、新たに3Dソフトで作成したアニメーションをGenArtsのSapphireプラグインによりデジタル加工し、曲に合わせて映像を繋ぎ合わせました。

また、このような個人での制作においては、映像を変えたら音を変え、音が変化したらそれに合わせて映像を変えるといった、「随時更新型」の制作パターンをとっています。

後から思ったのですが、「ex002」は、「ex001」では構成していなかったプロットや曲も作品用に作成したため、構成を考えたという点で、ただランダムに作品を作るよりも、秩序があり、完成度は高いものになっていると思う反面、制作者としては、驚きや意外性のような面白さが一部奪われてしまったのかなと思いました。作中使用している曲について詳しくは、Sho Sakai氏のブログを参考にしていただければと思います。

EXシリーズの今後の展開について

まだ自分の実験アニメーション作品は、カンファレンスや学生時代に行ったインスタレーション以外ではあまり公開をしたことがないため、YouTubeというインターネット上の空間をメインに徐々に知ってもらおうと思い、今から約2年前である、2015年に1つ目の作品「ex001」を公開してみました。小規模ながら1作目は目標であった再生数100回を超えられたため、 去年2作目にあたる「ex002」を作成し、クリスマスに公開を終えたところです。

今回は動画が200回再生されたら次回作「ex003」を作ろうと思い、前回よりも目標再生回数に早く近づいているため、 既に針金をベースにしたアニメーションを制作する次回作のプランを立てています。また、作曲家のSho Sakai氏が作成する音もかなりこだわりを持って制作をしているため個人的にも、とても楽しみです。

針金に反射した光のアニメーションは、暗い空間でプロジェクターなどを使用し大きく映し出すと、細かな光のテクスチャーまで味わっていただけるため、 近い将来インスタレーションなど実際の空間を利用して作品の発表をしていけたら良いなと思っています。